きものはうす 五箇谷

心の晴れは自分しだい

こんな着物・こんな帯・
その日の気持ち、その日の風、
そんなことでも変わる
今日の着物あわせ・・・
ちょっと書いてる気持ちや色々なことです

指輪の秘密 (小説風)

2021年06月13日

先日お店で面白いことがありました。

そのことをちょっと書きたいなっと思って

今日は思いがけず時間が取れたので

小説風に書いてみました!!😍

長くなりましたので

また個人的なことなので

時間が無い方、興味のない方は

お読みにならなくて大丈夫!スルーして下さいね!

大した事ではありません。。

ちょっと小説家になった気分で書いただけです!!

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今年の陽気はまたまたおかしい。

6月の初旬ではあるが、梅雨に入るどころか

30℃を平気で超える真夏日が続いている。

そんな日の午後、幸子は辺りを見回して、

他に誰もいない事を再度確認してこう聞いた。

「誰もいないから、ちょっと聞いてもいいですか?」

店主のピヨ子は目をパチクリしながら

「いいわよ〜何かしら?」

当然何か着物の事でも

聞かれるものだと思っていたが

幸子は茶目っ気たっぷりにちょっと上目遣いに

意外な事を質問した。

「ピヨ子さん、最近指輪していますよね〜?

それも左手の薬指に。。。。」と

悪戯っ子のように可愛い目眼差しで、

ニコッとして

そう店主のピヨ子に唐突な質問をした。

「え〜そんな事〜やだなー!!おかしい〜!!!」

ピヨ子は思わず吹き出した!!

「ちょっと気になって。。。そうそう、

お友達の洋美さんも

気づいてて。。最近指輪してるよね〜!?って

話していたんですよ〜!」

ピヨ子は思いがけずこの指輪を

気にしている人がいる事に

びっくりしながらも 幸子の質問の内容に

『なんて可愛い人なんだろう!』

とその質問の仕方と内容に、

心底、愛らしさを感じていた。

確かにピヨ子は ブログやお店での話題にも

娘たちと旅行や食事に行った時の様子を掲載したり

話したりするが、連合いの話はしたことがない。。。

子供がいるのだから 旦那さんもいるのだろうけど

旦那さんの話はでてきたことがない。。。

ピヨ子自身はそれを隠してるわけでも無ければ

特に秘密にする必要も無いのだけど

敢えて自らプライベートの事を言う必要も無いなと

思っていた。

そしてお店に集まる方々も

何故かそこは聞いてはいけないような

タブーなことのように感じてしまう。

そして

そう言う場合はとかく、

あれやこれやと憶測だけが

広がるものなのである。

そんなことがあり この指輪の存在が気になったのかな?

とピヨ子はなるほど。。。!と感じ

幸子にこの指輪の秘密を話し始めた。

2001年3月

ピヨ子が自分の店を持ち少し経った頃、

いつも行く銀行のそばにある店のウインドーの中に

ある指輪を見つけた。

その指輪は質屋の飾りウインドーの中で

一際輝いていた。

ピヨ子は着物には目が無かったが

宝飾には、とんと興味がなかった。

しかし 

その指輪は何故かピヨ子の目に留まり、

ピヨ子は足を止めて眺めていた。

『ルビーかな?私の誕生石だな〜

しかも蛇の頭にルビーなんて

面白いデザインだな〜』

ピヨ子はその指輪に興味が湧いてきた。

プライスも10000円。

『安いな〜偽物かな?』

そう思いながら

店員さんにそれを見せてもらうように頼むと

「ああ、これは縁起のいい指輪ですよ!

18金とプラチナだし 

ルビーもダイヤモンドも付いている。

もちろん本物ですよ」

そう説明を加えてくれた。

「へー本物なんだぁ!!!」

ピヨ子はお店を開いた記念にと

この指輪を購入した。

その指輪を着けるとサイズもぴったり!

そして心の中に

不思議な想いと不思議なパワーが溢れたように感じた。

『前の持ち主さんはなんでこの指輪を手放したのだろう?』

ふと、ピヨ子の頭をそんな想いがよぎった。

そして力強く生きていた女性のイメージが

ふと浮かんだ。

『私も頑張ろうっ!』

軽い気持ちで購入した指輪だったが

何か縁があるような気がして

その日からピヨ子はこの指輪を

肌身離さず着けていた。

そんな日々の中、

ピヨ子は自分の両手の指に異変を感じ始めていた。

どの指も第一関節が痛みだしたのである。

指はパンパンに腫れて

痒みも伴うなんとも言えない痛みが

有り、指先に力も入らない。

お店で着付けをしていても痛みが強まる一方で

指先がうまく動かず紐を結ぶにも支障が出てきた。

インターネットで症状を調べると

ある病名の指の病気と合致した。

『へバーデン結節』

中高年以上の女性に多い病気で有り

第一関節のみに炎症が出る。

ピヨ子はこれは病院に行かなければいけないなと思い、

【手の外科】と言う看板を掲げてる整形外科を訪ねた。

やはり医師の診断は思った通り

「これはへバーデン結節ですね〜。特に画期的な改善方法は

今のところ見つかってなくて

殆どの方はそのまま過ぎれば 

痛みも和らぎ支障は無くなりますが 

痛みを緩和したいなら注射治療もありますよ!

ただ後遺症として指先が曲がる場合もありますが」と

医師は言った。

ピヨ子は注射は嫌いだった。

でも痛みが有ると仕事に支障が有る。

やはり注射をしよう!

そう思い医師に注射治療を希望すると告げた。

医師は

「わかりました。

では治療に入りますので指輪を外して下さい」

と言った。

ピヨ子はこの時初めて

この指輪を外した。

これが今から5年ほど前の話である。

その時から指の痛さ、そして指の腫れのせいで

ピヨ子はこの指輪をする事をやめた。

そしてピヨ子はその指輪の存在をいつの間にか

忘れて暮らしていた。

2021年3月

世界中に予期しなかったパンデミック、

コロナウィルスが蔓延して

マスク生活を余儀なくされる毎日。

ピヨ子も感染リスクにこの先のお店の運営も

だんだんと先が見えない状態になっていく不安を

感じずには

居られないようになっていた。

一体いつまでこんな生活が続くのだろう?

皆が感じる大きな不安に笑顔も少なくなる日々。。

そんな中で

 間もなくお店を開いて20年となるある日。

初めて来店されたお客様がいらした。

その方は花のようなオーラのあるステキな女性。

着物も好きだが宝飾も大好きと言うその方の指には

美しい宝石が両手の指に煌びやかに輝いていた。

ピヨ子は その美しさに惹かれ

「ステキですね〜」と眺めていた。

そしてそれらの中にルビーの指輪を見つけた。

「あっ!これルビーですよね〜私の誕生石だ」

とそれと同時に

ピヨ子は自分もルビーの指輪持っていた事を

思い出したのだった。

そう、あの指輪の存在を思い出したのであった。

「私もそういえばルビーの指輪持ってました!

蛇の頭にルビーが嵌めてあるんです」と話した。

するとその魅力的な女性は

「それはすごく良い指輪だわ!ぜひ大事になさって!!」と

その女性は指輪の持つパワーをピヨ子に伝えた。

その瞬間から

ピヨ子はあの指輪が気になって仕方なくなった。

指輪のことを思うと胸がドキドキするような感覚に

どうにもいられなくなっていた。

そういえば

ピヨ子の指から外された指輪は

いつに間にか

ピヨ子の脳裏からも消えて

その行方は

何処に仕舞ったかも 定かではなくなり、

もしかしたらコロナ自粛中に

大々的に実行した断捨離で

捨ててしまったかもしれない。

そんな不安が過り、

一刻も早くその指輪を探さなければいけないと

切迫した気持ちになり、家路を急いだ。

家に着くと真っ先にアクセサリーをしまってある

引き出しに駆け寄った。

『きっとあそこにあるだろう!!』

と家路の中

思い描いていたところを探したが

見つからない。

泣きたい気持ちになった。

『ここに無いと言うことは。。』

家探しの如く引き出しや小箱をひっくり返した。

そして

小引き出しの箱の中に

他のアクセサリーの陰でキラリと輝く

ルビーの指輪を見つけることが出来た。

「有った〜〜神様ありがとう!!」

ピヨ子は思わず声を上げた。

ホッとした気持ちに思わず

その指輪を握り締めて

床に座り込んだ。

そしてピヨ子は右手の薬指に

その指輪を着けてみた。

すると指の太さと指輪のサイズが合わないのか

着けた指が何となくしっくりいかない。

そして次に左指の薬指に着けてみた。

すると全く指輪を着けてる感が無い。

その感覚に

ピヨ子は改めてこの指輪は自分と一体なんだと感じた。

パンデミックの中で自分の生き方も進み方にも

不安を感じてネガティブな気持ちになっていた自分が

指輪を嵌めた事で一気に解消され

「まだまだ頑張らなくちゃ!頑張れる!」と

不思議なパワーが心に漲るのを感じた。

ピヨ子は思わず左手に嵌めた指輪にキッスをした。

そして

『二度とこの指輪を離さない。』と誓った。

幸子はその話を聞きながら

「そうなんですね〜!!よく分かりました!

今日はその話が聞けてよかったです!楽しかったです!」と

納得した様子で 笑顔で店を後にした。

ピヨ子はその後ろ姿を見送りながら

自分の左手の薬指を右手で握りしめて

胸の前に置き

『ありがとう』と感謝の気持ちを噛みしめた。

そして

そうか、左手の薬指に指輪をする意味が

改めてわかったように思った。

右手で大事な指輪を覆い心に念じることが

できる。。。自分勝手な解釈ではあるが

まさに

腑に落ちた想いであった。

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